
視診触診・目・骨・胸・消化器
医師診察(理学所見)
医師の観察の所見です。
頭頸部・胸部(腹部) | 視診・触診によって、頸部のリンパ節や甲状腺の腫れがないかを調べたり、聴診器を胸部に当て呼吸音や心音などに異常がないか調べます。 |
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心電図

心臓の収縮・拡張のときに起きる微弱な電流の変化を波形のグラフで記録し、心臓の動きを検査します。
心臓の筋肉の異常、不整脈などを調べます。健康な方でも性別、年齢、体格によって所見が付くことがありますが、自覚症状(めまい、動悸、胸痛)がある場合は、精査をします。
(専門医を受診された方は、専門医の指示に従ってください。)
主な所見·診断
RSR’パターン | 右脚の電気の流れがわずかに障害されている場合に認めます。いわゆる異常心電図波形として指摘されますが、正常者でも認めることがあり問題ありません。 |
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Ⅰ度房室ブロック | 何らかの原因で心房-心室間の電気の流れに時間がかかっているが心室へ刺激は伝わっている状態です。ブロックの程度が悪化しなければ問題ありません。しかし新しく生じた場合や極端な伝導時間の延長そして自覚症状がある場合などには注意が必要です。 |
右胸心 心室性期外収縮 |
通常左側にある心臓が右側にあり、左右対称に入れ替わっている状態です。左胸部につける導子を右胸部に付け替えて心電図記録を行います。 |
ST上昇 | 心電図波形のうちで、ST部分が通常より上がった状態です。心筋梗塞、心筋炎、ブルガダ症候群などでみられますが、心臓に病気がなくても現れることがあります。 |
冠状静脈洞調律 | 心臓のリズムを作る場所が洞結節以外の心房(冠静脈洞や左心房など)にある場合をいいます。健康な人でもみられることがあります。 |
完全右脚ブロック | 右脚の電気の流れがブロックされた状態です。基礎疾患のない右脚ブロックは問題のないことが多く、電気の流れは左脚を通って伝わりますので右心の収縮には影響はありません。定期的に心電図検査を受けるようにしてください。狭心症、高血圧性心疾患などを合併し指摘された場合には原疾患に対する治療が行われます。 |
完全左脚ブロック | 心臓の中で刺激が正常に伝わらないために起こる不整脈の一種です。伝導の遅れや途絶の程度によりⅠ度からⅢ度まで分類されます。 |
完全房室ブロック | 心房-心室間の電気の流れが完全に途絶えている状態です。心房と心室が独立して電気刺激が発生しています。まれに無症状の場合もありますが、失神や突然死の原因となり非常に危険な状態です。早急に医療機関を受診し十分な精密検査を受けてください。緊急ペースメーカーなどの治療が必要となる場合があります。 |
軸偏位 | 心臓の筋肉が働く時に流れる電流の方向のことを平均電気軸といいます。この軸が通常より右側(時計回転方向)に傾いていることを右軸偏位、左側(反時計回転方向)に傾いていることを左軸偏位といいますが、軸偏位だけでは病気ではなく、特に問題ありません。 |
上室性期外収縮 | 洞結節より早く別の場所で心臓の拍動が指令される場合を期外収縮といい、心房や房室接合部(上室)で発生した場合、上室性期外収縮となります。緊張、興奮、ストレスなどで起こることもあります。動悸を感じたり、頻繁に起きる場合は薬物で治療することもあります。 |
上室頻拍 | 心臓の上室(心房や房室接合部)に余分な電気経路ができていて、その回路を使って伝導の空回りが急に起きるものをいいます。頻脈になりますが、洞性頻脈と違って突発的に起きることが多く、薬物やカテーテルアブレーションなどの治療を要することもあります。 |
心室細動 | 心室の筋肉がバラバラに興奮し心臓がけいれんしている状態をいいます。心臓から送り出される血液はほとんどなくなり短い時間で意識を失います。治療が遅れると、心臓が停止してしまう危険な状態です。 |
心室性期外収縮 | 本来、心臓の収縮が指令されない心室から、通常のリズムよりも早く発生した状態をいいます。健康な人では興奮、喫煙、過労などでみられます。心臓疾患の方でみられた場合、危険な不整脈に移行する可能性を検査する必要があります。 |
心房細動 | 心房内で洞結節とは異なる無秩序な電気信号が発生し、その興奮が不規則に心室に伝わる状態です。心房の中で血流が滞り血栓を作ることがあるため、脳梗塞の予防も含めた治療が必要です。 |
心房粗動 | 心房が1分間に240回以上で規則的に収縮する状態です。心室へ伝わる数が多く頻脈となっている場合や心房の中に血栓ができて脳梗塞を起こす危険があるため、治療が必要です。 |
高いT波 | 通常はなだらかな山型をしているT波の高さが通常より高く尖鋭化することをいいます。高カリウム血症(腎不全など)や心筋梗塞の発症直後、僧帽弁狭窄症などでみられます。健常な若者でもみられることがあります。 |
WPW症候群 | 心房-心室間の電気が伝わる正常なルート以外に副伝導ルート(ケント束)が存在するため心房心室伝導時間が短縮します。異常な伝導による頻拍発作がなく自覚症状もなければ問題ありません。頻拍発作の回数が多く日常生活に制限が生じる場合や失神などの重い症状を認める場合には医療機関を受診し精密検査を受けてください。 |
洞徐脈 | 心電図波形は正常ですが、心拍数が少ないものをいいます。心臓に拍動を指令する部位(洞結節)の異常や甲状腺機能低下症のほか、健康な人でもスポーツをよく行っている人にみられます。 |
洞性不整脈 | 心臓の拍動のリズムは正常ですが、興奮の間隔が不整となる状態をいいます。健康な人でもよくみられ、吸気時に心拍数が増加し、呼気時に心拍数が減少する呼吸性不整脈の一種です。 |
洞頻脈 | 心電図波形は正常ですが、心拍数が1分間に101回以上のものをいいます。発熱、心不全、甲状腺機能亢進症などのほかに、健康な人でも不安・興奮・緊張などのストレス、アルコール摂取や運動で起こしやすくなります。 |
Ⅱ度房室ブロック | 心房からの刺激が心室へ伝わったり伝わらなかったりする状態です。心房心室伝導時間が徐々に延長し心室への刺激がなくなるウェンケバッハ型はあまり問題ありませんが、症状がある場合には精密検査が必要です。突然心室への伝導がなくなり心室の収縮が止まるモビッツⅡ型は心臓の病気を合併することが多く十分な精密検査が必要です。 |
不完全右脚ブロック | 右脚の電気の流れがわずかに障害されていますが、伝導時間は正常範囲内に保たれており問題のない状態です。いわゆる異常心電図波形として指摘されますが、RSR’パターンと同様に正常者でも認めることがあり問題ありません。 |
血圧脈波
検査項目 | 基準値 | 基準値 (東振協) |
この検査でわかること |
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PWV (右/左) |
(左右とも) 1.00~1.29 |
― | 心臓から押し出された血液による拍動が動脈を伝わっていく速度で、動脈壁の硬さがわかります。速度が速いほど、動脈硬化が進んでいることを意味します。 |
ABI (右/左) |
(左右とも) 0~1400 |
― | 足関節と上腕間の最高血圧の比率で、末梢動脈疾患をスクリーニングするための検査です。高値の場合、血管の壁が硬くなっていることが疑われます。 |
胸部
胸部X-P(X線)で、肺・気管支の状態や心臓・大動脈などの形に異常がないか、また、脊柱や肋骨に異常がないかを調べます。
主な所見·診断
右胸心 | 本来は胸部の左側にある心臓が右側にあります。生まれつきの異常によるものです。 |
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横隔膜の挙上 | 横隔膜が上にあがっている状態です。横隔膜神経の麻痺、横隔膜弛緩症、肝腫大、横隔膜ヘルニアなどでみられます。 |
気胸 | 肺胞という袋状の組織が融合した大きな袋が破れる病気です。 |
胸水 | 胸部に通常存在しない水がたまった状態です。心不全、腎不全、胸膜炎などの場合にみられます。 |
胸膜肥厚 | 肺を包む胸膜が厚くなった状態です。過去の胸膜炎、肺感染症などが考えられます。 |
結節影 | 胸部X線画像に映った直径3cm以下の類円形の陰影をいいます。原発性肺がんや大腸がん、腎がんなど他の部位からの転移、結核、肺真菌症、非結核性抗酸菌症、陳旧化した肺炎、良性腫瘍などにみられます。 |
索状影 | 太さが2~3㎜のやや太い陰影を索状影といいます。肺感染症が治った痕跡などとして現れます。 |
心陰影の拡大 | 心臓の陰影の横幅が胸の横幅の50%よりも大きくなっています。肥満、心不全、心臓弁膜症などの場合にみられます。 |
ステント留置 | 気管・気管支や食道、血管などの狭窄解除などの治療目的で、金属などで作製した拡張装置を病変部に留置します。気管支ステント留置、冠動脈ステント留置、食道ステント留置などがあります。 |
脊柱側弯 | 背骨が左右どちらかに弯曲していることをいいます。 |
石灰化影 | 肺結核などが治ったあとに石灰化が沈着して白く映る陰影です。肺過誤腫などにも石灰化影をみることがあります。 |
線状影 | 太さが1~2mmの細い線状の陰影をいいます。葉間胸膜の肥厚や心不全でのリンパ管の拡張などで現れます。 |
大動脈の石灰化影 | 大動脈にカルシウムが沈着しています。動脈硬化などの場合にみられます。 |
大動脈の蛇行 | 大動脈が弯曲して走行しています。動脈硬化などの場合にみられます。 |
内臓逆位 | 内臓がすべて左右逆に配置されている状態です。胸部でいえば肺や心臓、大動脈が本来ある位置と逆になっている状態です。生まれつきの異常によるものです。 |
嚢胞影 | 肺胞の壁の破壊や拡張によって、隣接する肺胞と融合した大きな袋になったもので、一般には直径1cm以上のものをいいます。これが破れると自然気胸という病気が起こります。 |
網状影 | 直径数mm前後の網の目状にみえる陰影が広範囲に拡がってみえるようになった状態です。肺線維症(間質性肺炎)、サルコイドーシスなどにみられます。 |
粒状影 | 直径数mm以下の顆粒状の陰影でびまん性に広い範囲にみられることの多い陰影です。粟粒結核、肺真菌症、びまん性汎細気管支炎などにみられます。 |
漏斗胸 | 胸の全面中央にある胸骨が内側に陥凹していることをいいます。 |
肋骨の奇形・変形 | 肋骨の形態異常や変形を指しますが、おそらく病気というよりは生まれつきの個人差によるものととらえて良いと思います。 |
上部消化管
検査項目 | 基準値 | 基準値 (東振協) |
この検査でわかること |
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上部消化管/ X線検査 |
所見なし | 所見なし | バリウムにより消化器を二重造影し、テレビモニターで観察すると同時にX線撮影をして臓器の形の変化や異常(がん、潰瘍など)を調べます。人間ドックの場合は、食道も調べます。 |
上部消化管/ 内視鏡検査 |
所見なし | 所見なし | 先端に小型カメラを内蔵した細い管を口または鼻から挿入し、食道·胃·十二指腸をじかに観察する検査です。異常がみられた箇所の組織を取って悪性度の評価をする場合もあります。 |
主な所見·診断
【X線検査】
胃潰瘍 | 胃粘膜の欠損(陥凹)した良性の病変です。出血する場合がありますので内視鏡などの精密検査が必要です。 |
胃潰瘍瘢痕 | 胃潰瘍が治り、胃粘膜が修復された状態です。年1回の経過観察で良いです。 |
胃がん | 胃粘膜に発生した悪性腫瘍です。診断は組織の一部を採取して行う病理検査(生検)で確定します。 |
胃陥凹性病変 | 胃粘膜の欠損(陥凹)した病変で、良性または悪性の胃粘膜下腫瘍や胃癌が含まれます。内視鏡などの精密検査が必要です。 |
胃底腺ポリープ | 胃の上中部にできる1cm以下の小さな半球状の隆起(ポリープ)です。複数あることが多く、良性です。多くの場合、放置してかまいません。 |
胃粘膜下腫瘍 | 胃粘膜の下の層から発生したこぶ状または陥凹した腫瘍性病変です。良性と悪性のものがありますので、一部のものを除いて内視鏡などの精密検査が必要です。良性と確認できたものも形や大きさの変化の有無の経過観察を行います。 |
胃ポリープ | 胃粘膜の内腔に突出(隆起)した病変で、胃底腺ポリープ以外に過形成、腺腫などの種類があり、初めて指摘された場合は内視鏡などの精密検査が必要です。 |
胃隆起性病変 | 胃粘膜の内腔に突出(隆起)した病変で、胃がんや悪性の粘膜下腫瘍も含まれます。内視鏡などの精密検査が必要です。 |
透亮像 | 周囲に比べてわずかに造影剤がはじかれた所見です。丈の低い隆起を表しており、良性ポリープなどで多くみられます。胃がん(特に早期がん)などでもみられることがあります。気泡や残渣などでもよく似た所見を呈するので気を付けなければなりません。 |
ニッシェ | 潰瘍によって生じた胃壁の欠損にバリウムがたまった所見です。ニッシェの輪郭や辺縁の性状から良性潰瘍か悪性腫瘍に伴う潰瘍かを判別します。 |
粘膜不整 | 正常胃粘膜はX線検査では均一で微細な模様を呈していますが、その構造が乱れた状態をいいます。慢性胃炎や比較的凹凸に乏しい胃がんなどが原因となります。 |
ひだ集中 | 潰瘍が治癒する過程で粘膜が引きつれて、粘膜ひだが一点あるいは線(ときには局面)に向かって集まった所見です。集中するひだの様相をみることによって良性潰瘍によるものか悪性腫瘍によるものか推定できます。 |
ひだ粗大 | 胃粘膜には胃の長軸に沿ってひだがみられますが、ひだが太くなった状態をいいます。慢性胃炎、胃がん、リンパ腫などが原因となります。 |
ひだの乱れ | ひだは通常表面・辺縁が平滑で、直線状またはゆるやかにカーブを描くように走行していますが、通常の形状や走行ではない状態をいいます。慢性胃炎や腫瘍性病変が原因となります。 |
変形 | 正常の胃は、バリウムやガスで伸展させると、鉤型を呈しています。病変があるときにはいろいろな変形をきたします。 |
慢性胃炎 | 胃粘膜に炎症が慢性的に続くことを慢性胃炎といいます。慢性胃炎には胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎や、粘膜が凹凸になる過形成性胃炎、粘膜が厚くなる肥厚性胃炎などがあります。 |
※この項目での精密検査必要とは、「良性・悪性の鑑別が必要である」という意味です。
【内視鏡検査】
食道 | カンジダ性食道炎 | 食道感染症の中で最も多いもので、真菌(カビ)の一種であるカンジダが食道粘膜に侵入した状態です。免疫力低下、過剰な糖摂取などが原因となります。気管支喘息治療で吸入薬を使用している場合に認められることがあります。経過観察が必要です。 |
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逆流性食道炎 | 胃内容物(多くは胃酸)の逆流により、食道胃接合部や食道下部にびらんなどの粘膜障害が認められます。ピロリ菌に感染していない人では胃酸分泌が保持されますので、ピロリ菌未感染者での発生頻度が高くなっています。主な症状は胸やけや呑酸ですが、のどの違和感などが出現することもあります 治療としては、プロトンポンプ阻害薬などの酸分泌抑制薬が非常に有効です。 |
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食道裂孔ヘルニア | 胃の一部が裂孔から胸部へと脱出してしまった状態です。原因は加齢や肥満などがあります。胃の内容物が逆流して逆流性食道炎を起こしやすくなります。ほとんどの場合、放置してもよい所見です。 | |
食物残渣 | 食物残渣があり、観察が不十分な場合には日を改めて検査を行うなど術者の判断に従ってください。 | |
胃 | 胃アニサキス症 | アニサキスという寄生虫により、イカ、サバなどの摂取後に急激な心窩部痛で発症します。アニサキス虫体が粘膜に刺入して、浮腫、発赤、びらんを形成します。アニサキスを摘出する治療が必要です。 |
胃潰瘍 | 胃酸の影響を受けて胃の粘膜に欠損が生じた状態です。ピロリ菌の感染と非ステロイド性抗炎症薬が2大病因であるといわれています。また、ストレスも原因となります。重篤な合併症として、出血や穿孔などがあります。治療が必要です。ピロリ菌による胃潰瘍では、除菌治療により再発抑制が可能です。 | |
胃潰瘍瘢痕 | 胃潰瘍が治癒し粘膜欠損が修復された状態で、胃潰瘍の瘢痕期に相当します。経過観察が必要な場合があります。 | |
萎縮性胃炎 | 主にピロリ菌の感染によって引き起こされる胃炎を指します。大部分の方は無症状ですが、軽度の消化不良または胃もたれや膨満感などの症状を呈することがあります。高度の萎縮性胃炎は胃がん発生リスクが高く、定期的な内視鏡検査が必要です。また、ピロリ菌除菌治療により胃がん発生リスクが低下することが期待されています。 | |
胃底腺ポリープ | 消化管の内腔を覆う粘膜の一部が隆起したもので、茎のない5mm程度の半球状のものがほとんどです。ピロリ菌のいない胃に発生することが多く、がん化することもないので経過観察は不要といわれています。 | |
胃粘膜下腫瘍 | 胃の粘膜層よりも深い胃壁内に発生した病変を指し、病変が大きくなるにつれ、胃の内腔に突出した隆起を形成したり表面にくぼみや潰瘍を形成することがあります。経過観察または精密検査が必要です。 | |
腸上皮化生 | 萎縮の進展に伴い胃粘膜が腸上皮類似の上皮に置き換わった状態です。胃がんの発生母地と考えられ、内視鏡による経過観察が必要です。 | |
鳥肌胃炎 | 胃粘膜に大きさが均一な結節状顆粒状の隆起が密集して認められ、あたかも皮膚にみられる鳥肌のように観察されることから名称されています。前庭部で観察されることが多く、若年成人のピロリ菌感染者の特徴的な内視鏡所見であり、胃がん発生リスクが高いことが報告されています。ピロリ菌除菌治療により鳥肌胃炎は改善し、胃がん発生リスクも低下することが期待されています。。 | |
平坦型びらん性胃炎 | 前庭部に多く認められます。数ミリ大の発赤を伴い、多発することが多いです。単発性で不整形の場合、がんとの鑑別が必要です。経過観察または精密検査が必要です。 | |
幽門狭窄 | 胃がんや胃十二指腸潰瘍、膵臓や大腸などの大きな腫瘍による外部からの圧排、胃の運動機能の異常(精神的、過度の飲酒、薬、外傷)などにより、胃の出口(幽門)が狭くなった状態です。原因を調べる精密検査が必要です。 | |
隆起型びらん性胃炎 | 食物残渣があり、観察が不十分な場合には日を改めて検査を行うなど術者の判断に従ってください。 | |
十二指腸 | 異所性胃粘膜・胃上皮化生 | 十二指腸に胃の粘膜がみられる状態です。異所性胃粘膜は先天性病変です。胃上皮化生は、炎症や潰瘍などで生体防御的に発生したものです。いずれも病的な意義はなく、放置しても差し支えありません。 |
十二指腸炎・びらん | 十二指腸に炎症が起こった状態です。炎症が軽度の場合は放置しても差し支えありませんが、ひどい場合は経過観察や内服治療が必要です。 | |
十二指腸潰瘍 | 十二指腸の粘膜に欠損が生じた状態です。原因は主にピロリ菌感染であり、そのほかに非ステロイド性抗炎症薬などがあります。重篤な合併症として、出血、穿孔、狭窄などがあります。治療が必要です。ピロリ菌除菌治療により、潰瘍の再発はほとんどしなくなります。 | |
十二指腸潰瘍瘢痕 | 十二指腸潰瘍が治癒した状態です。放置しても差し支えありませんが、経過観察が必要になることもあります。 | |
十二指腸憩室 | 放置しても差し支えない変化ですが、胆石や膵炎を合併することがあります。また、まれに急性憩室炎を起こして治療が必要になることもあります。 |
※この項目での精密検査必要とは、「良性・悪性の鑑別が必要である」という意味です。
胃
検査項目 | 基準値 | 基準値 (東振協) |
この検査でわかること |
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ヘリコバクターピロリ抗体 | 3.0u/ml未満 | 3.0未満 | ピロリ菌に対する血清抗体を調べます。感染の有無は、抗体価が3未満は陰性、10以上は陽性です。3.0~9.9はグレーゾーンとなり、感染していない可能性が高いですが、尿素呼気試験をお勧めします。 |
尿素呼気試験 | 2.5‰以下 | ― | 診断薬を服用し、服用前後の呼気を集めてピロリ菌の有無を診断します。簡単に行える精度の高い診断法です。ピロリ菌に感染している場合、外来を受診し除菌治療(1週間内服)をされることをお勧めします。 |
ペプシノゲン | ペプシノゲンⅠ値 70.1ng/mL以上 または ペプシノゲンⅠ/Ⅱ比が 3.1以上 |
― | 血清中のペプシノゲン値を測定して、胃粘膜の萎縮の程度を調べます。胃がんに発展する可能性がある萎縮性胃炎の診断に役立ちます。 |
ABC検査
ヘリコバクターピロリ抗体検査と胃粘膜萎縮マーカーのペプシノゲン検査を組み合わせて、胃がんリスクをABC(ABCD)の3群(4群)に分類するのが、こちらの検査です。
ABC分類 (ABCD分類) |
ヘリコバクター・ピロリ抗体価検査 | ||
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(-) | (+) | ||
ペプシノゲン検査 | (-) | A | B |
(+) | D(C) | C |
A群 | おおむね健康的な胃粘膜で、胃の病気になる危険性は低いと考えらえます。逆流性食道炎などピロリ菌に関連しない病気に注意しましょう。未感染の可能性が高いですが、一部にはピロリ菌の感染や感染の既往がある方が含まれます。一度は内視鏡検査などの画像検査を受けることが理想的です。 |
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B群 | 少し弱った胃粘膜です。胃潰瘍・十二指腸かいようなどに注意しましょう。胃がんのリスクもあります。内視鏡検査を受けましょう。ピロリ菌の除菌治療をお勧めします。 |
C群 | 萎縮の進んだ弱った胃粘膜で胃がんになりやすいタイプと考えられます。ピロリ菌の除菌治療と定期的な内視鏡検査をお勧めします。 |
D群 (C群) |
萎縮が非常に進んだ胃粘膜と考えられます。胃がんなどの病気になるリスクがあります。ピロリ菌感染診断をお勧めします。かならず専門医療機関で内視鏡検査などの診断を受けてご相談ください。 |
E群 | ピロリ菌の除菌治療を受けた方は除菌判定の結果に関わらず、E群(除菌群)として定期的に内視鏡検査を受けましょう。 ※除菌により胃がんになるリスクは低くなりますが、決してゼロになるわけではありませんので、除菌後も内視鏡検査医による経過観察が必要です。 |
腹部超音波
腹部に超音波をあて、肝臓、腎臓、胆嚢、膵臓、脾臓等の病変の有無を調べる検査です。
主な所見·診断
肝臓 | 肝血管腫 | 血管から構成される肝臓の代表的な良性腫瘍です。ただし、徐々に大きくなることもあり、経過観察を受けてください。 |
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脂肪肝 | 肝臓に脂肪が過剰に蓄積した状態です。糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病と密接な関係があり、内臓脂肪型肥満や飲酒が原因であることが多いです。脂肪肝から肝硬変・肝細胞がんへ発展することがあり、脂肪肝がみられる人は生活改善が必要です。 | |
肝腫瘍 | 肝臓の腫瘍には良性腫瘍から悪性腫瘍まで色々な腫瘍があります。良性か悪性かの鑑別のため、精密検査を受けてください。肝臓の悪性腫瘍には肝臓自体から発生した腫瘍(原発性腫瘍)と他の部位から転移してきた腫瘍(転移性腫瘍)があります。原発性腫瘍では肝臓がんが多くを占め、転移性腫瘍では、消化管、胆道、膵臓、子宮、卵巣等に発生した腫瘍からの転移が多くを占めます。 | |
肝腫瘤 | 腫瘍の可能性の低い結節像(炎症後の瘢痕など)を肝臓に認めます。精密検査の必要はありませんが、経過観察を受けてください。 | |
肝嚢胞 | 液体が貯留した袋状の病変です。単発あるいは多発し通常は無症状ですが、嚢胞が大きくなると腹部膨満感、圧迫感等の自覚症状が認められることもあります。 | |
慢性肝障害 | 肝障害が継続的に起こっている、あるいは起こっていたことが考えられます。慢性肝障害の原因として、飲酒、脂肪肝、B型肝炎、C型肝炎、自己免疫性肝疾患などがあります。原因を明らかにすることと、現在どの程度まで進行しているのかなど精密検査を要します。 |
腎臓 | 腎腫瘍 | 腎臓の腫瘍には良性腫瘍から悪性腫瘍まで色々な腫瘍があります。良性か悪性かの鑑別のため、精密検査を受けてください。悪性腫瘍の代表的なものは腎細胞がんです。 |
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腎腫瘤 | 腫瘍の可能性の低い結節像を腎臓に認めます。良性か悪性かの鑑別のために精密検査を受けてください。 | |
腎石灰化 | 腎実質に、カルシウムが沈着した状態です。炎症性など様々な原因で石灰化がみられます。そのほとんどは良性所見であり、放置しても差し支えありません。 | |
腎嚢胞 | 液体が貯留した袋状の病変です。単発あるいは多発し、加齢とともに発生頻度が増加します。良性病変で放置してもよいのですが、嚢胞が大きく、周辺臓器への圧迫症状や破裂の危険性がある場合や、水腎症をきたす場合(傍腎盂嚢胞)などは治療(外科的手術など)の適応となることがあります。 | |
腎の変形 | 腎臓は左右に各1個ありますが、左右で大きさが違ったり、左右がつながっている(馬蹄腎)場合などがあります。特に心配はありません。 |
胆嚢 | 胆管拡張 | 肝外胆管(肝臓から十二指腸への胆汁の通り道)が8mm以上(胆嚢摘出後は11mm)に拡張した状態です。胆管結石や腫瘍が疑われる場合には精密検査が必要です。 |
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胆泥 | 濃縮胆汁や感染に伴う炎症性産生物のことですが、胆嚢がんなどの腫瘍と紛らわしい超音波像を示すため精密検査が必要です。 | |
胆嚢腫瘍 | 胆嚢には良性の腫瘍(多くの胆嚢ポリープ)だけでなく、胆嚢がんなどの悪性の腫瘍ができることもあります。腹部超音波検査のみでは確定診断ができないことが多いので、早急に精密検査を受けてください。 | |
胆嚢腫瘤 | 腫瘍の可能性の低い結節像(炎症後の瘢痕など)を胆嚢内に認めます。精密検査の必要はありませんが、経過観察を受けてください。 | |
胆嚢腫大 | 胆嚢が腫れた状態です。一番多い原因は胆嚢の炎症で、症状がなくても経過観察をお勧めします。胆管結石や腫瘍などにより胆汁の流れが滞ったときにも認められ、この疑いがあれば精密検査が必要です。 | |
胆嚢ポリープ | 胆嚢の内側にできる隆起です。人間ドック受診者の10%程度にみられると言われています。10mm未満でかつ良性であることを示す所見が認められる場合は問題ありません。 |
胆嚢 | 膵腫瘍 | 膵臓の腫瘍には良性から悪性まで色々な種類の腫瘍があります。代表的な悪性腫瘍である膵がんは、大きくなると周囲の血管などにも影響が出ますが、ごく初期には悪性の特徴を捉えることが難しいことが多いのです。膵腫瘍が見つかったら早急に精密検査を受けてください。 |
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膵腫瘤 | 腫瘍の可能性の低い結節像(炎症後の瘢痕など)を脾臓内に認めます。精密検査の必要はありませんが、経過観察を受けてください。 |
脾臓 | 脾腫 | 超音波で脾の最大径が10cm以上の場合を脾腫としています。軽度の脾腫は病気ではありません。原因が感染症(肝炎、マラリア、結核など)、腫瘍(リンパ腫、白血病、骨髄線維症など)、貧血、蓄積症(アミロイドーシス、ヘモシデローシスなど),うっ血肝(肝硬変,バンチ症候群など)、膠原病など多岐にわたるため精密検査が必要な場合があります。 |
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副脾 | 脾臓の近くに脾臓と同じ組織像をもつ1~2cm大の腫瘤のことを副脾と呼びます。病的意義はなく特に治療の必要性もありません。 | |
腹部腫瘍 | 胸部に対し、腹部の腫瘍という意味です。正確には、腹腔内腫瘍、後腹膜腫瘍(副腎・尿管・大動脈・下大静脈・交感神経幹などの腫瘍)、骨盤内腫瘍(膀胱・前立腺・直腸・卵巣・子宮などの腫瘍)が含まれます。腫瘍臓器の特定と良・悪性の鑑別診断のため精密検査が必要です。 | |
腹部大動脈瘤 | 心臓が血液を送り出す最も太い血管が大動脈で、その壁がもろくなり膨らんでこぶのように突出したり、風船のようになった状態を大動脈瘤といいます。原因の多くは高血圧と動脈硬化です。5cmまでの場合には経過観察、5cm以上になると精密検査の上、治療が必要です。 |
ドクターからのアドバイス
脂肪肝が疑われる方へ

超音波画像検査での脂肪肝の診断と、血液検査での肝機能異常がみられる場合には、食活生を中心に生活習慣の見直しが必要です。特にアルコール性脂肪肝の場合は、節酒、禁酒に気を付けることが最も大切です。
- 甘い物を摂ったり、間食の習慣をやめる
- 肥満の方は、まずダイエットを実践しましょう。無理のない程度に1ヵ月に1~2kg減を目標とするとよいでしょう
- 良質なたんぱく質、野菜をきちんと摂る
- 飲酒量を少なめにする、禁酒をする
- 日常生活の中で、なるべく積極的に動く